仮想と現実の真ん中あたり

主に舞台探訪とか聖地巡礼と呼ばれる記録をつづるブログ

「咲-Saki-」のフレーミングに着目してみる

■「咲-Saki-」第5巻 とらのあな特典イラストカードの背景探索記
 大和・奈良県吉野郡吉野町 漫画【 咲 Saki 】〜 宝探しゲーム? 〜
ひでさんによる、「咲-Saki-」第5巻の、とらのあな特典のイラストカードの背景を探した顛末記がアップされました。
のどっちのセリフ一つから舞台を探していく、その過程が素晴らしいですね。その情熱には頭が下がります。本当にお疲れさまでした〜。


■「咲-Saki-」探訪記あれこれ更新
ブログの速報では既報ですが、最近発見された「咲-Saki-」舞台について、本家サイトの探訪記を更新しました。
 リアルのどっち家(長野県諏訪郡原村)
 第1巻目次,原作版ドラマCDジャケ絵の背景(長野県茅野市
 第6巻カバーの背景(長野県下伊那郡松川町
 第42局[悪夢]扉絵の背景(長野県上伊那郡中川村)
 第5巻目次の背景岐阜県中津川市


■「咲-Saki-」のフレーミングに着目してみる
更新した探訪記の中から、今回は第6巻カバー、第42局[悪夢]の扉絵の2つを取り上げてみます。この2つの背景のモデルは、いずれも魚眼レンズで撮影されています。

 舞台探訪者の心得
・探訪先では、地元の人の迷惑にならないように行動する。
・観光地でない場所や公共施設でない場所への探訪,撮影には十分注意する。
・探訪者の多い場所での行動は控えめに。
→協賛サイト:舞台探訪ルール

※「咲-Saki-」探訪関連の記事一覧は、キーワード「咲-Saki-」で。


まず、第6巻カバーですが…、


第6巻カバー(YG付録版)
長野県松川町
これについては、ぜひ↑の探訪記中の写真をクリックして表示される、等倍の元データをご覧になってみて下さい。
市販されている魚眼は35mm換算で15mm相当までしか無いため、撮影地点はだいたいここで合っているはず。
とすると、第6巻カバーで咲が座っているガードレールは、実は撮影位置からこんなに離れた位置にあります。にもかかわらず、まるで一番手前にあるように見えるのは、「講釈師、見てきたような嘘を言い」(もちろんこの場合、講釈師の才能を讃える褒め言葉)とでも言いたくなるような、描き込みの度合いで遠近感を作り出している背景のマジックですね。
ちなみにこの背景担当は、いつものカラー背景を担当されているヤオキン氏です。


そして第42局[悪夢]の扉絵ですが…、
第42局 扉絵(第5巻 P165)長野県中川村
手持ちの魚眼レンズを使っても背景の絵ほど歪曲してくれませんでしたが、この超広角といい歪曲ぶりといい、元の写真も魚眼レンズで撮影されたものに間違いないでしょう。


そして、現地に立ってみると分かるのですが、この2つの場所は、普通は撮影対象にしようとは思わない場所のですよ。普通に「信州らしさ」を求めて県内を旅行する人は、絶対こんな所撮ろうと思わないでしょう。
そしてまた、普通は魚眼で撮ろうとも思わない場所だと思います。(魚眼向きの被写体の実例はこちらで→【伊達淳一のレンズが欲しいっ!】トキナー AT-X 107 DX Fisheye 10-17mm F3.5-4.5
にもかかわらず、魚眼レンズのフレームで切り取ってみると、実に「『咲-Saki-』らしい」絵が現れるのが不思議です。


この、現地に立って、360°の風景の中から、カメラのフレームで「咲-Saki-」の背景と同じ構図を切り出してみるということ。それは、その作者の行為をたどることであり、またその創作活動の一部を追体験することでもあります。
そして、それは舞台探訪の醍醐味の一つではないかと思います。


昨今ではネット上での「舞台の特定」の速さが競われる傾向があって、たしかに情報も無いところから一番最初に見つける人の努力は賞賛されるべきものだとは思うのですが、舞台探訪の魅力というのは、決してそれだけではないと思うわけですよ。
「後から行っても、尽きせぬ魅力がある」
そんな「熱烈歓迎わんだーらんど」である「咲-Saki-」の舞台世界を、機会があればぜひその目で見て楽しんでみて下さい。

 本記事内の「咲-Saki-」の画像の著作権は、小林立先生にあり、ここでは当該作品の比較研究を目的として引用しています。