7/30発売のヤングガンガン増刊号に掲載された「咲-Saki-」番外編の[ふくよかにすこやかに]は小鍛治-福与コンビの話。OFFを通した二人の交流が描かれる、小粋なエピソードです。
冒頭の舞台は、どうやら小鍛治プロの地元のようです。以前の回で、「潰れそうだった地元のクラブチームを救うために地元のクラブチーム入りして、地元の人に大人気」というエピソードが紹介されていましたね。
[ふくよかにすこやかに]扉絵 |
高台に立ち、目の前に広がる川辺の町を見下ろす少女時代の小鍛治プロの後ろ姿。郷愁を誘う雰囲気を感じさせてくれる、いい絵ですねぇ。
■読者への挑戦状?
さて、この作品中に、気になるセリフが登場します。
[ふくよかにすこやかに] P71 |
「1時間半」とは、また妙に細かい数字です。
設定が細かい小林先生のことですから、これもきっと何か裏付けのある時間なのだろうなぁ、という事は容易に想像がつきます。
そういえば、古式ゆかしい推理小説には、「読者への挑戦状」という仕掛けがありました。名探偵が謎解きを始めるクライマックス直前で、「ここまでの部分で、推理に必要な手がかりは全て示された。さあ真相を推理してみよ」と作者が読者に挑戦文を提示するという、アレです。
先のセリフを深読みすると、これは小林先生の読者への挑戦状だ、とも思えて来ます。
そこで、あえてミスリード覚悟で、これを「読者への挑戦状」として楽しんでみることにしましょう。
『「咲-Saki-」読者への挑戦状:番外編の中で、推理に必要な手がかりは全て示された。さあ舞台を推理してみよ』
正解は、謎解き編で。
舞台探訪ルール
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※「咲-Saki-」探訪関連の記事一覧は、キーワード「咲-Saki-」で。
■謎解き編
さて、「咲-saki-」読者の諸君、謎解きを始めようではないか。
まず最初の手がかりは、
[ふくよかにすこやかに] P71 |
だったね。ここで、麻雀大会会場は東京都千代田区有楽町にある事が分かっている。
次に、扉絵を見て、何か分かるだろうか?
えっ、「これだけじゃ何もわからない」? そんな簡単にあきらめちゃいけない。
たしかに舞台探しは推理小説とは違う。正解にたどり着くだけの手がかりがあるのか、あるいはそもそも正解があるのかさえ分からない。
でも、見つけ出すためには、手の中にある材料と、そして自分の想像力を信じてフルに活用することだ。先が見えない現実世界においてさえも、出口を探す力になるのは正にそれなのだから。
もう一度、扉絵をよく観察して、分かる事から一つ一つ拾い上げてみよう。
2.川の左側に海か湖のような大きな水面。入り江っぽい?
3.目の前の川は、そう大きくない。
4.川岸の平地は比較的広くて、対岸の向こうには丘の連なり。→河岸段丘っぽい?
5.川の河口には突き出した砂嘴→湖から流れ出す川に砂嘴は出来ない。湖だとしたら流れ込む川。
6.川の河口に橋はない。
そして、
7.住宅地の具合からすると、わりと田舎っぽい。都会ではない。
最後にもう一つ、大きな手がかりを忘れちゃいけない。
[ふくよかにすこやかに] P69 |
8.鉄道沿線。
さて、ここまでの観察で、我々は十分な手がかりを得ることが出来た。さぁ、この手がかりを元に、次の推理のステージに進もう。
東京都心から車で1時間半かかる場所で、かつ海か湖がある場所というと、神奈川県か千葉県か茨城県の三県だ。
しかし、神奈川県の場合だと小田原市あたりだが、これだと、先の6,7が合致しない。
また、千葉県の場合だと、都心から1時間半の距離にある川というと、内房,外房は平地に乏しく、九十九里方面は単調な砂浜でかつ鉄道が無く、利根川流域は平坦で段丘が無い、と、どれも条件が合致しない。
すると、残るのは茨城県内の海か湖に流れ込む川のある入り江の地形だ。
すなわち、
霞ヶ浦に流れ込む川の河口、もしくは那珂川河口か久慈川河口のいずれか、しかも鉄道沿線
に絞られる。ほらね、やれば出来るじゃないか、ワトソン君?
「都心から1時間半」の条件に一番近い霞ヶ浦の鉄道沿線から地図で探して行くと…、
恋瀬川が霞ヶ浦に流れ込む入り江、茨城県石岡市高浜が、いかにもそれらしい地形として目に入って来る。
見つけた! ココだ!
そして実際に確かめに行って見ると…、
[ふくよかにすこやかに]扉絵 | 茨城県石岡市高浜付近 |
どうだい、人間の知恵の力はちょっとしたものじゃないか、ワトソン君?
さて、読者諸君は自力で正解にたどり着けたかな?
→地図付きの探訪記本編はこちらで。
えっ、何だって? 「そこはオマエの出身県で、毎年近くに墓参りに行ってるじゃないか」だって? そんなことは気にしちゃいけないよ、ワトソン君。
どっとはらい。