仮想と現実の真ん中あたり

主に舞台探訪とか聖地巡礼と呼ばれる記録をつづるブログ

第74局[神鬼]扉絵の背景の場所

やぁ、ワトソン君。久しぶりだね。
え? 何だい、いきなり?
…あぁ、先週発売のヤングガンガンに出てた「咲-Saki-」第74局扉絵の件かい?


第74局 扉絵(YG '10 No.23)


いつもながら、いい絵だねぇ。
可愛いキャラを追っていくパース線のその先に、そのキャラの地元の街が俯瞰構図で広がっている様子が見事じゃないか。
普通のマンガなら「描き込みすぎ」と言われかねない手法だけど、1枚の扉絵を使って、まるで『甲子園出場校の地元紹介』番組を構成して見せるような、このセンスには脱帽だよ。


え、何? そうじゃない? “場所”だって?
ああ、一応、特定だけはしてあるよ。実際の場所については、ひでさんが取材して詳しいレポを上げているから、そっちを参照するといい。(参照:諸国漫遊 浪速・大阪市 漫画【 咲 Saki 】〜上町台地〜
実は、大都会の中での探索は、自分の守備範囲外でね。最初は、特定もレポも乗り気になれなかったんだ。
でも、今回は“謎解き”の他にも、面白い発見があったんだ。
良ければ、その話をしようか?
(以下、続きで)

舞台探訪者の心得
 ・舞台を荒らさないこと。 ・住民に迷惑をかけないこと。 ・舞台での行動は慎重に。

※「咲-Saki-」探訪関連の記事一覧は、キーワード「咲-Saki-」で。


■謎解き編
さて、問題の第47局の扉絵を、もう一度良く観察するところから話を始めるとしよう。





この絵から読み取れることを挙げてみよう。
 1.登場人物が姫松高校のキャラという事は、大阪府大阪市阿倍野区の周辺?
 2.大阪平野のわりには、ハッキリとした段差のある地形、そして階段
 3.階段右側には長屋のような建物
 4.画面右端に、通信塔のような鉄塔


2.からすると、大阪の平野部としては珍しい地形のように思える。最初はそう考えて、阿倍野区周辺をGoogleマップを探したのだけど、意外にも、この付近には沢山の階段がある事が分かった。
しかも、それらの階段は、直線状に並んでいるようだ。





「なるほど、これはきっと、昔の淀川の土手の跡なんだろう」
と、そう思ったわけだが、後でmixi「咲-Saki-」舞台コミュでしにふぃえさんとひでさんに、これは“上町台地”という地形だと教えてもらった。全く感謝だよ。この地形は、古代の淀川・大和川水系砂嘴の跡なのだそうだ。(参考:上町台地 -Wikipedia-
大都市大阪の街中で、大昔の川の名残に出会うとは、何とも興味深いじゃないか、ワトソン君。


そして、この「階段ライン」(上町台地の崖線)を追って行くと…、





困った事に、2km以上にわたって続いていたよ。これを一つ一つ追っていくのは大変そうだ。
そこで次に、探索範囲をしぼるために、4.に着目することにしよう。


第74局 扉絵(拡大図)


この鉄塔を探すために、最初、「テレビ塔&大阪」,「通信塔&大阪」で画像検索をかけてみたんだが、通天閣大阪タワーがヒットするばかりで、作品中の鉄塔が見あたらない。
そこで今度は、Google Earthを使って、この「階段ライン」の西側を“低空飛行”してみた。(この場合、地図と連携出来るように、Googleマップの「Google Earthモード」を使うのがポイントだ)
すると…、





幸運にも、阿倍野区に近い場所で3Dモデルを見つけることが出来た。
これは、『NTT関西 ネットワークセンタ今宮ビル』という建物だそうだ。


さて、これで第74局扉絵の場所を特定するための鍵がそろった。
先の「階段ライン」から見て、通信塔が扉絵中の位置に見える角度になるように、線を引いてみよう。





この交差点付近を探せばいいわけだ。





ほら、見つかっただろう? 簡単な事だよ、ワトソン君。





いささか僕の趣味じゃないが、ストリートビューで確認してみよう。




第47局 扉絵 
うん、間違いないようだ。
せっかくだから、Google Earthでも見てみよう。
第47局 扉絵 
鉄塔が同じ角度で見える事がよく分かるだろう?


さて、今回の発見のポイントは、「階段が直線状に並んでいる」事実に気づいた事だった。
そして、その正体は、古代の川の名残だったわけだ。
「世界は自分が見ている以上に奥深く広がっている。自分が見ていると思っている物は、その氷山の一角にすぎない」
そう改めて実感出来た事が、今回僕にとっての一番の収穫だった。そう思うのだよ、ワトソン君。

 本記事内の「咲-Saki-」の画像の著作権は、小林立先生にあり、ここでは当該作品の比較研究を目的として引用しています。