最近の僕はすっかり引退同然でね。探訪は若い方々のご活躍にまかせて、養蜂家の真似事をしているよ。え? なんで養蜂家かって? それは働き蜂のようにだね…、え? それは養蜂家じゃない?
まぁ、そんな事はおいとこう。
ところで、ビッグガンガン Vol.9掲載の「咲-Saki-」新シリーズ、「シノハユ」の第0局は読んだかい? 今後の展開を期待させる、良い導入編だったねぇ。
え? 瑞原プロの暗号? ああ、あんなもの、分かるわけが無いじゃないか。早々にあきらめたよ。「踊る人形」じゃあるまいし。
…と、そう思っていたんだがね。「咲-Saki-」ファンには凄い方がいらっしゃるね。
M1,2,4,8,17,34,68の管理人さんがTwitter上でこの暗号にチャレンジされていて驚いたよ。さすが、深読みファンの層が厚い作品だけの事はあるね。
そこで、自分も解いてみようと思ったわけだが…。
(以下、続きで)
舞台探訪者の心得
・舞台を荒らさないこと。 ・住民に迷惑をかけないこと。 ・舞台での行動は慎重に。
※「咲-Saki-」舞台推理関連の記事一覧は、キーワード「舞台推理」で。
■“はやりん暗号”の謎〜その1〜:「温泉・パンチ・グッド」とは?
さて、この「温泉・パンチ・グッド」とは一体何の暗号だろうか? すこやんが言うには、ビルの名前らしいのだが…。
言葉を記号に置き換えているなら、何らかの変換規則があるはずだね。まず、それを推定してみよう。
(1)変換規則の推定
(a)英語に置き換える?
温泉=「スパ」と読み替えれば良いのだろうか? しかし、暗号化の際に別の言語に変換し、さらに記号化するのは二度手間で、人間にとって自然な思考ではない。(元が英語なら別だが)
一旦この方向は保留しておこう。
(b)文字変換する?
ベタに読んだ文字、「おんせんぱんちぐっど」を文字変換すると元のビル名に戻るのだろうか? しかし、この変換規則だと、暗号化の際には元のビル名とぴったり同じ文字列になる記号を探す必要があり、自由度がとても低い。
この方向も保留としておこう。
(c)音節に変換する?
一つの記号が一つの音節に対応しているのだろうか? これは、人間のごく自然な思考方法だ。
ちなみに、古代エジプトの神聖文字(ヒエログリフ)も、表音文字であることを手がかりにして解読されている。(参考:wikipedia:ヒエログリフ) この辺が好きななら、サイモン・シンの「暗号解読」を一読することをお勧めするよ、ワトソン君。
- 作者:サイモン シン
- 発売日: 2007/06/28
- メディア: 文庫
手がかり1:「温泉・パンチ・グッド」=「湯(ゆ)・手(て)・?」?
(2)麻雀バー“Blitz storm”の場所の特定
次に、作中に登場する麻雀バー“Blitz storm”の位置を特定してみよう。
実は、作者はこの看板の1コマ前に、重要なヒントを隠してくれている。
実は、この右のコマの場所は、「阿知賀編」第4局に同じ構図が登場していて、既にひでさんによって特定されているのだ。すばら!
BG Vol.9 P167 | 東京都中央区銀座 昭和通り |
こんな何気ないコマにも、ちゃんと意味を持たせてるのが「咲-Saki-」の凄いところだ。
“Blitz storm”は銀座の近くにあるに違いない。
手がかり2:麻雀バー“Blitz storm”は銀座の近くである可能性が高い。
以上の2つの手がかりから、Google検索窓に「銀座 ユーテ」を入力してみると、ぐぐる先生は即座に「銀座 ユーティ」に訂正してくれた。ビンゴ!
検索結果で一番上に出て来たのは、「ユーティライズパーキング銀座セントラルビル」。Street Viewで見てみると、パーキングビルのようだね。
“はやりん暗号”の「温泉・パンチ・グッド」の解読結果は、「湯(ゆ)・手(て)・昇る(ライズ)」=「ユーティライズパーキング銀座セントラルビル」だったというわけだ。
パーキングビルというのは、一見意外な場所に見えるかもしれないね。けれども、特定されても迷惑がかかりにく場所、と考えると納得の設定じゃないかな、ワトソン君?
…もっとも、他のプロ全員がこのメールを解読出来たのは納得出来ないがね(笑)
■“はやりん暗号”の謎〜その2〜:「ねことひよこが5回」とは?
必要な予備知識は、『阿知賀女子の宿は帝国ホテル』という熱心なファンには周知の事実。
阿知賀編 第3巻 P14 | 帝国ホテル |
会合の案内メールに書く内容と言えば、道案内だ。
セリフ内の記号では、猫は正面を向いていて、ひよこは左を向いている。つまり、猫が信号直進で、ひよこは左折だ。
より大きな地図で 「温泉・パンチ・グッド」の地図 を表示
↑の地図を見ればお分かりの通り、帝国ホテル前から歩いた場合、信号を猫・猫・ひよこ・猫・ひよこの計5回で、麻雀バーBlitz stormがある「ユーティライズパーキング銀座セントラルビル」に到着する。簡単な事だよ、ワトソン君。
■結論:「咲-Saki-」シリーズ、おそるべし
さて、こうして謎が解けてみると、おそるべき事実が判明する。
お題となる「ねことひよこが5回」と「温泉・パンチ・グッド」は
[2013.7.27 追記]書いた時にファイルした冒頭の2Pを無くしていて、ページ数の位置を誤って記述していました。
何とも、地図を前にしてネタを仕込んでいる作者先生方のいたずらっぽい顔が目に浮かぶようじゃないかね、ワトソン君?
第0局からこれだけのネタを仕込んでくる作者陣による「咲-Saki- シノハユ」に、どうして期待しないわけがあるかね? もちろん、期待せずにはいられないさ!
なお、お題をいただいたM1,2,4,8,17,34,68の管理人さんのおかげで本記事が書けました。ありがとうございました!
本記事内の「咲-Saki- シノハユ」および「咲-Saki- 阿知賀編」の画像の著作権は小林立先生,五十嵐あぐり先生にあり、ここでは当該作品の研究を目的として引用しています。