仮想と現実の真ん中あたり

主に舞台探訪とか聖地巡礼と呼ばれる記録をつづるブログ

「ARIA」グランドフィナーレ

「ARIA」第12巻

ARIA(12) (BLADE COMICS)

ARIA(12) (BLADE COMICS)

この作品は、他には無い、特別な世界を見せてくれた作品でした。
ページを開いた時にパッと広がった空間描写が目に入って、そしてそこに登場人物の言葉や表情が浮かぶように自然に入り、そしてまた細部まで描かれた風景に目を戻すうちに、その登場人物の感情の余韻が風景に溶け込んでいく。
それはまるで、旅先の車窓をながめながら話す何げない会話が、ずっと後まで深く印象に残るような、あの感覚に似ていたかもしれません。
『お話』というよりも、「別世界に実在する日常への扉」とか「別の時間軸へのワープ」というような、そんな独特の感覚を与えてくれた作品でした。


そんな、時の経過とは無関係な、時が止まった悠久の世界であるかのような「ARIA」世界も、ついに終わりを迎える日がやって来ました。
まるで永遠に続くかと思われた素敵な時間を惜しむ気持ちはあれど、「次の未来」を目指す灯里達を見ていると、ノスタルジックな気分ばかりに浸ってもいられません。
そんな、登場人物達に背中を押されるような、「ARIA」らしいフィナーレでした。


ところで、作中で、アリシアさんが灯里に昇格を先延ばしにした理由を告白する場面がありますが、それは、実は作者がこの作品を予定よりも長く続けた理由の独白でもあるのではないかな? そんな風に思えました。
ともあれ、長い間、素敵な時をありがとう。
そう、思わず自然に感謝の気持ちが沸き上がってくる作品でした。
(せーの、「恥ずかしいセリフ禁止!」(笑))