仮想と現実の真ん中あたり

主に舞台探訪とか聖地巡礼と呼ばれる記録をつづるブログ

第69局[抱負]扉絵,第70局[東風]扉絵の舞台、他

年末に上京して取材した物件と合わせて、溜まっていた探訪記をアップしました。


 第69局[抱負]扉絵,第70局[東風]扉絵,他の探訪記 (東京都渋谷区,他)
 第63局[散会]の探訪記岐阜県中津川市 湯舟沢)
 第1話背景の探訪記 (長野県松本市 梓川地区)


湯舟沢のは昨年の10月の取材のものなので、大分更新がたまってましたね。
今年は、もっとコンスタントに更新して行きたいなぁ、と。(今年の抱負)


■画角とパースと「咲-Saki-」背景の舞台裏(?)
今回、構図選びでちょっとした失敗をしてしまいました。
けれども、この失敗の原因を追って行くうちに、思いがけずに「咲-Saki-」背景の舞台裏(?)が見えて来たので、ここにご紹介しましょう。


(以下、続きで)

舞台探訪者の心得
 ・舞台を荒らさないこと。 ・住民に迷惑をかけないこと。 ・舞台での行動は慎重に。

※「咲-Saki-」探訪関連の記事一覧は、キーワード「咲-Saki-」で。


第63局[散会]で部長とキャプテンがワハハ号を見送るシーンですが まず、最初に撮影した写真を見てみましょう。


YG '10年 No.09 P265
岐阜県中津川市 湯舟沢


よく見ると、色々と作中と構図が合ってないですね。
写真と作品中を比べると、写真では奥行きが急速に狭くなっていて、例えば車道のライン間がより鋭角になり、奥のカーブミラーが小さくつぶれて見えなくなってしまっています。俗に「パースがきつい」と言われる絵です。
これは、撮影に広角レンズを使ったためです。(実際にはトリミングで周辺をカットしているが、それでも広角め)
仮にこの写真を背景にして描くと、ワハハ号がかなり小さくなってしまって、例えば鶴賀メンバーが手を振る描写などが見づらくなってしまう事が予想出来ます。


それでは、次に正解の構図を見てみましょう。
YG '10年 No.09 P265
岐阜県中津川市 湯舟沢


今度の撮影地点は、先ほどより5mぐらい後ろに下がって、55mm相当の標準レンズの画角にしてみました。
パースが緩くなったために、車道のライン間が広がり、奥のカーブミラーも見えて来ましたね。
この『奥の物体が大きくなって近づいて見える』現象は、カメラ用語では『圧縮効果』と呼ばれるもので、特に望遠レンズを使った際に顕著です。
『圧縮効果』は、「パースが緩い」を距離感で捉え直したものと言っても良いでしょう。


さて、なぜ今回最初の撮影に失敗したかというと、実は、ここ湯舟沢の舞台では、作中で広角レンズの構図が多用されているのです。


第7巻 P130岐阜県中津川市 湯舟沢


↑は先のワハハ号見送りシーンのすぐ近くの場所ですが、18mm相当の超広角で撮られています。
それで、ワハハ号見送りシーンも同じく超広角だと思ったのですが、実はそうじゃなかったというわけ。


でも、これって逆に考えてみると、「咲-Saki-」の背景は、奥行き感を出す場合には広角で、逆に奥を大きく描きたい時には標準(望遠)で、と使い分けられているということですよね。
パースと圧縮効果は、
 (1)レンズの焦点距離を変える
 (2)画像のトリミング(切り出し&拡大)
どちらでも、同じ画角なら同じ効果が得られるので、取材時にレンズを変えたのか作成時にトリミングを使ったのかまでは分かりません。
それでも、これらのコマを読み解いた結果から、画角を選ぶ事によって奥行き感の演出を工夫しているという、「咲-Saki-」の製作過程の一端が見えて来ますね。
舞台探訪の際には、現地で「なぜこの画角,構図なんだろう?」と考えながら撮影してみると、また違った面白さが見えて来ることでしょう。(深読みなので、外れても気にしない方向で)


また、以上の事から、舞台探訪者にとっての注意点としては、正確な構図で撮りたければ、
・撮影地点さえ合っていれば、(広角めに撮っておけば)構図は後からトリミングでも合わせられるので、現地では撮影地点を割り出して合わせることが大切。
だと言えるでしょう。


参考文献:
 えふのへや - 等々力随想 -望遠レンズの圧縮効果-
 GAINAXアニメ講義第13回 「アニメの消失点とパースの必要性」 ('11.01.11 追加)

 本記事内の「咲-Saki-」の画像の著作権は、小林立先生にあり、ここでは当該作品の比較研究を目的として引用しています。